今回より3回に分けてハザードマップの落とし穴と正しい理解について説明します。
今回はその①(基礎~津波編)についてお話します。
ハザードマップとは、予想される被害の範囲や危険度を地図上に表現した「被害予測図」や「危険度マップ」のことをいいます。
これらの多くは防災アセスメント調査や地震被害想定調査、河川調査などの結果に基づいて、予測される災害の発生地点、被害範囲や危険度を地図上に重ね合わせています。 さらには避難場所や避難方向などの情報も示されている場合があります。
以前は「防災マップ」という名称で(今でも使われていますが)、避難場所や避難所、防災関係機関、消火栓などが地図上に示されているモノが多かったと思います。
平成13年の水防法の改正で、河川の浸水想定区域を指定・公表することになり、これを契機に洪水ハザードマップ(浸水想定図)が広まりました。
その後、阪神・淡路大震災を踏まえた建物の耐震化を促進させるための地震ハザードマップ(平成17年)、津波による浸水範囲を示す津波ハザードマップ(平成16年)などが作成されるようになりました。
このように、地域住民の皆さんへあらかじめ、浸水の危険度、地震による揺れや液状化、津波の浸水範囲を示すことにより、予測される被害や危険な規模・範囲を把握してもらい、早期避難や防災対策を促すことにより、被害の低減を図ることを目的とされてきました。
しかし・・・
東日本大震災の津波被害において「津波ハザードマップの予想浸水範囲」と「実際の津波による浸水範囲」と大きくかい離していたことは皆さんの記憶に新しいのではないでしょうか。
ただ単に逃げ遅れたのではなく、「ここまで津波は来ないだろう」という先入観(思い込みや過信)や油断も、被害を拡大させた一因なのではないかと考えています。
仙台市や石巻市をはじめとする津波ハザードマップにおいても「ここまで津波は来るが、この場所は大丈夫だ」という「安全マップ」のような認識があったのかも知れません。
これは住民の皆さんだけでなく、自治体職員の方々にも同様の認識が広まり、これを前提にして都市計画や都市整備を進めていた経緯がありました。
また、2012年8月の南海トラフ巨大地震の津波被害想定について、愛媛県宇和島市で62カ所中27カ所で津波高2~7mもの誤差が発生した経緯がありました。これは精度の低い標高データを使ったことが原因とされています。
被害想定調査などは範囲が広域になるほど、用いるデータ(精度・時点・範囲・母体数など)にバラつきが生じることがあります。 調査結果も表示範囲が広域になることから、ピンポイントで把握しづらい点があげられます。
このようなことからハザードマップは自分の住む場所や勤務場所が、どのような災害リスク(危険性)が潜んでいるのかを正確に知ることが大切です。また、ハザードマップで示されているものは1つの指標だという前提と、決して「安全マップ」でないという認識を持ち、個々の場所や条件によって危険度や被害状況は様々だということを心掛けましょう。
次回は、地震ハザードマップにおける落とし穴と、正しい理解についてお話します。
②は地震ハザードマップ
③は洪水・浸水ハザードマップ