災害リスクアドバイザー 松島康生 

停電時に通話できなくなるのは、IP電話だけではない!

~既存の固定電話も危ない落とし穴~

 

TBSテレビの「NEWS23」、「いっぷく!」、また、大阪MBS毎日放送の「ちちんぷいぷい」など(2014年12月8-9日(月・火)放送)の電話インタビューをお受けしました。

放送枠に入りきらなかった部分や放送だけでは伝えきれなかった内容をココで補足説明させていただきます。

 

■背景

2014年12月6日、徳島県の「三好市」「つるぎ町」「東みよし町」が、雪の重み等で電線が切れたり、電柱が倒壊しました。この影響で最大864世帯1526人が孤立しました。

孤立状態にあった住民の安否確認ができない原因は、家庭の固定電話が光ファイバーによるIP電話とされています。

徳島県では平成14年から県内各地に光回線の整備を進めており、光ファイバー(CATV)によるIP電話を使うことで、同一地域内の住民同士は通話が無料になるなどのメリットがあったため、7~8割の世帯がIP電話を利用していたようです。

この光ファイバー(CATV)は、インターネットの高速化によるIP電話だけではなく、TV視聴や防災行政無線放送などにも利用されていたようで、さらには過疎化や限界集落の解消のためにネットビジネスの誘致を行えるなどのメリットがあったのではないか思います。

 

■IP電話と従来型の固定電話回線との違い

これまでの従来型の固定電話の電話線(メタル回線)には、一定の電気(約48V)が流れているため、停電時でも電話機へ電力を供給して通話(発信・受信)ができました。

一方、光ファイバーを使ったIP電話は、レーザー光の信号を変換して光ケーブルで送るため、電気は通さず、停電してしまうと電話機としての機能を失ってしまう「盲点」があげられます。

このことから光ファイバーを使う場合は、光信号を送るための電気が必要となるのです。

 

■従来型の固定電話も停電時に使えない!?

実はIP電話だけではなく、従来型の固定電話機でも停電時に使えない電話機はたくさんあります。

昔のような黒電話であれば、余計な機能が付いていないため停電時でも通常通り使えるのですが、現在、販売されている電話機は「停電対応電話機」や「停電時発信着信機能」が付いていない電話機は停電時には回線に関係なく使えません。

また、「停電対応電話機」や「停電時発信着信機能」が備わった電話機でも、停電時は子機が使えない。ナンバーディスプレイが表示されない。短縮発信などの機能は原則使えません。

さらには電話機の途中にモデム類などの中継機器が入っていると使えない場合もあります(電話口のモジュラージャックに直接差込めば大丈夫)。

 

■自宅の電話を確認してみる

自宅の電話機が停電時に使えるかどうかは、試しに電話機やモデムの電源コンセントを外して、仮想の停電状態で、受話器を取ってみて下さい。ツーと音がすれば、停電時でも使えるという証しです。この場合、固定電話に電話を掛けてみると、いつもとは違う鳴り方をすると思います。

このように停電時に使えるのか、使えないのか、停電時の電話の鳴り方などをあらかじめ把握しておくことが大切です。

 

■停電対策の注意点

インターネットの高速化に伴い、既に光回線のご家庭も多いかと思います。停電時に光回線がまったく使えないということではありません。

この特性を知って、必要に応じた対策を講じれば、一定の効果はあります。

その一例として、停電時に一定時間電力を供給するUPS(無停電電源装置)などもあります。また、最近では家庭向けの停電対応のバッテリーもあります。

下記参照

https://flets.com/hikaridenwa/subscription/teiden.html

https://www.ntt-east.co.jp/release/detail/20120228_01.html

但し、これらバッテリーの寿命に限りがあるという点です。

NTT東日本に聞いたところ、バッテリーの寿命期限は定めておらず、使用状況により変化してくるため、どの程度使い続けられるかは定かではないと言う回答でした。

特にご高齢の方や電気知識に乏しいご家庭では、バッテリーの寿命が切れても交換せずに使い続けてしまうことも予想されます。

 

■災害リスクからみた対策方法

光ファイバーを使ったIP電話は、今後もインターネットの高速化と共に全国的に増えていくものと考えられ、大規模地震や台風で停電した場合も、光ファイバーを使ったIP電話は今後も使えなくなることが予想されます。

-IP電話の対策例-

個人(家庭)としての備え

○電気を途絶えさせない工夫として、一定時間使える家庭用蓄電池の導入検討(照明・通信用)

○IP電話用モバイルバッテリー(定期的な点検が必要)の導入検討

○小型発電機の導入検討

○電話回線を使わない安否確認や見守りシステム(特に高齢者世帯)の導入検討

 

地域としての備え(特に孤立が予想されるような地域)

○集落ごとの自治会館や集会所に下記のような導入の検討

・発電機、ラジオ、照明など

・電線等が切れた場合を想定して「衛星携帯電話」、「無線機(役場と直接連絡の取れる)」

○地元のアマチュア無線局との協定を検討

なとが考えられます。

 

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松島 康生
この記事を書いた人
災害リスク評価研究所 代表
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