災害リスクアドバイザー 松島康生 

新版 耐震診断・耐震補強と業者選び

熊本地震以降、さらに問い合わせが多くなったのが、建物の耐震性や耐震診断・耐震補強についてのご質問です。どこが危険なのか、どんな業者を選べば良いのか・・・など
いくつか注意点をまとめてみましたので、耐震診断や耐震補強工事を検討されている方は参考にしていただければ幸いです。

 

■地震防災の要は建物(自宅)!

建物を地震から守ることは極めて重要です。その理由に阪神・淡路大震災で亡くなった方の約8割が建物の倒壊によるものということは周知のことと思います。東日本大震災では津波による流出全壊の印象がありますが、全半壊建物396,900棟のうち、124,800棟が津波による被害数で、残りの 272,000棟以上の建物は地震の揺れによる被害です。
また、熊本地震のような直下で発生する活断層地震の場合、激しい揺れに2度も襲われて、建物被害が拡大しました。

大規模地震に対して、家具の転倒防止を行うことはもちろんなのですが、住んでいる家が倒壊しては意味がありません。まずは建物の耐震性をチェックすることからはじめましょう。

 

■地震で壊れる住宅「6つの弱点」

日経ホームビルダーで「リフォームしたばかりの家が倒れた」というタイトルで、新潟県中越沖地震(2007)において、リフォームしたばかりの家が倒壊した記事が掲載されていました。地震による弱点を明確に記されていた記事だったので要点を整理してみました。

 

■新耐震基準の盲点

昭和56年(1981年)に建築基準法が改正され、新しい耐震基準が施行されました。これがいわゆる「新耐震基準」と呼ばれている建物ということになります。
よく言われるのが新耐震基準の建物は震度いくつまで耐えられるのかという事です。あくまでも震度は気象庁が定めたものであり、建築基準法上では建物が瞬間的に移動する速度(加速度)にどれだけ耐えられるのかを基準としているので、整合がとれていない現状があります。一般的な目安としては震度6強よりも少し上程度だと認識しておけばよいかと思います。

この新耐震基準を要約すると「致命的な損害を回避し、すぐには崩壊しない程度に人命を保護する」こととされています。

このため施工会社によっては耐震基準ギリギリで設計・施工されていることもあり、最初の大地震には耐えられても余震など複数回の地震によって倒壊することも考えられるのです。 また、軟弱地盤や液状化地盤ではさらに揺れが増幅することもあり、損害がより大きくなることも予想されます。
このようなことから新耐震基準をクリアした建物であっても震度6強以上の地震に対して「絶対安全」という保証はないということを認識しておく必要があります。

 

耐震補強工事、失敗しない業者選び、4つのポイント

私の個人的な考えになりますが参考にしていただければ幸いです。

◎強引な訪問営業や不安をあおる業者はキケン
診断商法とか、点検商法とも呼ばれ、この家はキケンだから、すぐに耐震補強しないと崩れてしまう。と不安ばかりをあおるような業者がいます。今の状態だと次の地震が来たら倒壊してしまう、キャンペーン中だから今契約すれば半額にすると強引に契約させようとします。極めて悪質なのが点検と称して、床下などに入り込み、他で撮った腐敗した木材の画像を見せつけて、工事契約させるような悪徳業者もいます。このような業者の多くは、大雑把な見積もりだったり、いい加減な工事が目立ちます。

 

◎ホームページのランキングはアテにならない
近年は減ってきましたが、以前は故意に特定の業者だけをランキングの上位に上げている比較サイトなどが存在していました。
ただ単に地域で契約数が多いとか、請負額が高いなど、技量や信頼とは掛け離れたランキングが乱立していました。
要するに人気ランキング=技量や信頼、アフターサービスが良いとは言えないという認識が必要です。

 

◎建設業許可されている業者は安心の証し
1500万円未満の耐震補強工事や500万円未満のリフォームを行うにあたり、建設業許可は必ずしも必須とはされていません。
一方、「建設業許可」を取得している業者は下記のような条件を満たすことが必要なため、信用・信頼性では安心感があります。
・経営者としての経験が5年以上
・専任技術者としての実務経験が10年以上
・財産要件(資産)が500万円以上
・過去に不正行為や不誠実な行為がない

会社を訪問することで建設業許可を取得されている業者であれば「建設業の許可票」が掲げられています。また、接客や雰囲気などから社風をうかがい知ることができます。
併せて、納得のゆく説明をしてくれるか、詳細な見積書を出してくれるかなども安心できる業者の証だと考えています。

 

◎地元に古くからある建設・建築業者
私の持論ですが、地元に古くからある建設業者や建築業者が信頼できるのではないかと考えています。その理由には、地元で手抜き工事や悪い対応をしていれば、あっという間に噂は広がりお客様は離れてしまいます。
地元で末永く商売をしているということは一定の信用があるからだと感じています。また、地元であれば、すぐに対応をしてもらえるなどのメリットもあります。

 

耐震診断の費用を補強工事に上乗せされていないか

最近では耐震診断が無料~数万円程度の安価なものが増えてきました。悪意のある業者は耐震診断をタダ同然で行い、その分の費用を耐震補強工事代金に上乗せしているケースが少なくありません。極端に安い耐震診断には注意する必要があります。
また、耐震診断した会社がそのまま補強工事を請負うことが多いため、実質、相見積(比較)が出来ない現状にあります。これは他の会社が作成した耐震補強工事設計書で相見積をすることを嫌う傾向にあるからだとされています。

 

建設・建築業者の盲点

意外と見落としてがちなのが建物の基礎となる地盤のことを知らないという業者の方も少なくありません。液状化や軟弱地盤も含めて、地盤をキチンと調べておくようにしましょう。

その理由に野島断層保存館にメモリアルハウスという活断層が真横に走っていながらも倒壊しなかった家が公開されています。倒壊を免れた理由の一つに基礎のコンクリート量を増やしていたということがあげられています。このように建物を支える基礎にも注意が必要です。

 

耐震診断は定期的に行う

近年は防蟻・防腐剤を塗布した木造建物が増えているため、シロアリの被害は少なくなったものの、木材の劣化や腐食は免れることはできません。住んでいる地域によって劣化具合は変わってきますが、おおむね初回は10年目、それ以降は5年程度ごとに耐震診断や建物診断されることをお勧めします。特に中程度の地震が発生した後、主構造の接合部分や壁面、土台などに被害が出ていないかを見ていくのが大切です。

 

建物の土台である地盤も

建設・建築業者の盲点として見落としてがちなのが建物の基礎となる地盤のことを知らないという業者の方も少なくありません。液状化や軟弱地盤も含めて、地盤をキチンと調べておくようにしましょう。一部の業者は液状化や軟弱地盤に関係なく、建物だけを補強する傾向にありますが、地盤状況に合わせて耐震補強がされるのが理想かと思いますが、現状では把握しづらい状況にあります。

液状化が疑われる土地では地盤改良や液状化防止工事、基礎コンクリートの補強も必要となります。

その例として、阪神・淡路大震災で同じ時期に建てられた新興住宅地の一部だけが倒壊した事例がありました。これは倒壊した家の地盤が旧河道(昔河川だった場所)に位置していたため、揺れが増強して倒壊したとされています。
一方、野島断層保存館にメモリアルハウスという活断層が真横を走っていながらも倒壊しなかった家が公開されています。倒壊を免れた理由の一つに基礎のコンクリート量を増やしていたということがあげられています。

このようなことから耐震診断と共に建物が建っている地盤にも注意が必要なのです。

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松島 康生
この記事を書いた人
災害リスク評価研究所 代表
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