災害リスクアドバイザー 松島康生 

小型Drone(ドローン)を野外で飛ばす際の注意点

2015年4月にDJI製のマルチコプター Phantom(ファントム)2が、放射性物質を搭載して首相官邸に墜落しました。これを契機にDroneに対しての規制が厳しくなると考えられます。

 

一方、簡単に手に入る安価なDrone(ドローン)はその規制対象外になることも予想されることから、5万円未満の小型ドローン向けに下記のような注意点を掲げました。

 

当初、災害リスクの現地調査用に土砂災害リスクのある斜面や擁壁、植生などの確認。そして災害現場の調査を目的にParrot製 AR.Drone 2.0をテスト導入してみました。
東日本大震災後の被災地をピンポイントで撮影しようと現地に持ち込みましたが、沿岸部特有の山からの吹き下ろしの風に煽られて、あっと言う間に海へ流されDrone本体をロストさせてしまった経緯がありました。
特にParrot AR.Droneは、iPad(iPhone)のWi-Fiで操縦するため、通信距離に限界(圏外)があり、風に流されるとコントロールが効かなくなる弱点があります。

この苦い経験を踏まえて、GPSが搭載されたDJI製のマルチコプターPhantom(ファントム)3の購入しようと考えたのですが、その前にプロポと呼ばれる操作コントローラーに慣れておく必要性があります。

 

3次元の操縦が苦手なので、プロポ(コントローラー)の練習用として、安価なSYMA製のクワッドコプター「X5C」(200万画素ムービーカメラ付き)を購入して練習をしていますが、さまざまな課題や問題点があることにも気が付きました。

 
 
これらParrot AR.Drone 2.0 やSYMA クワッドコプター X5Cの苦い経験を踏まえて、小型ドローンをこれから始めようとする初心者の方に向けて注意点を列記します。
◆飛行場所(周辺・周囲)に気を付けよう
◎住宅やマンションが近接している場所はNG
◎重要施設の近くや私有地上空はNG
◎鉄道や常に車の往来がある道路付近はNG
◎空港・滑走路・滑空路付近はNG
◎高圧線や電線、鉄塔がない場所
◎周囲に極力、人が居ない場所(特に子供やお年寄りが居ないことを確認)当然のことばかりですが、これらを考慮すると広い公園や運動場、広場、河川敷、湖沼地、沿岸(海岸沿い)になってくるかと思います。
なお、このような場所であってもラジコン等が禁止されている場所もありますので、事前にチェックが必要です。
また、沿岸(海岸敷)や河川敷の朝夕は、海陸風などの風の通り道になるため、風速が急に変化することを念頭においておきましょう。

 
◆ドローンを飛ばす際の重要事項
◎風がある時は、飛ばさない。または高度を上げない。
小型ドローンは軽量で風による影響を受けやすいため、風速3~4mを超える風(葉が絶えず揺れている状態)では、飛ばさない。または高度を上げないのが鉄則です。
小型ドローンは「そよかぜ」程度の風でも簡単に流されてしまいます。また、風は一定とは限らず、特に高度を上げると風速が強くなり、あっという間に流されてしまう危険性があります。◎通信距離には限界がある
操作できる通信距離は機種や場所によって様々です。状況によっては40m足らずでも制御不能に陥ることもあります。これまでの経験による実際の通信限界は、Parrot AR.Drone2.0のWi-Fi通信距離:40~50m程度。SYMA X5Cの2.4GHz電波:50m程度です。

コントローラー(プロポ)と本体との電波の到達距離には限界があるため、風に流される事を常に考慮して操作する必要があります。
例えば、高さ50m上空で、30mも風に流された場合は=通信距離が60mを超えるため、制御不能に陥る危険性があります。制御不能に陥るとDrone本体を壊すだけでなく、風に流されて他人の敷地に落下したり、人や建物、クルマなどにぶつかる危険性も高まります。
プロポと本体との電波の到達距離には限界がある◎バッテリー(電池)切れ
機種やバッテリーによって飛行時間には限りがあります。DJI製のマルチコプターPhantom2やPhantom(ファントム)3には、バッテリーが低下すると、GPSによって自動的に帰還する機能が搭載されていますが、安価なドローンは電池切れを起こすとその場で墜落するしかありません。
例えば、SYMA X5Cは約7分間の飛行が可能とされていますが、風の影響でモーターに余計な負荷が掛かかると、バッテリーを多く消費するため、これよりも短時間になることもしばしばあります。また、バッテリーの劣化や低温下ではさらに短時間になります。

◎進行方向を見失う
SYMA X5Cの場合、前面(進行方向)に赤いLED(後方は緑LED)が点灯します。高度を上げすぎたり、逆光であったりすると、LEDが見えづらく、風にあおられるとどちらが前面(進行方向)なのか見失う危険性があります。
小型ドローンの場合、常に前面(進行方向)が見える範囲内で飛ばすことが必要です。

◎充分な練習
小型ドローンはラジコン機でありながら、機体を安定させるジャイロセンサー等により、初心者でも簡単に飛ばすことができます。 しかし、「プロポ」の操作に慣れている方であればいいのですが、Droneの回転向きによっては、コントローラーの左右や前進後進が逆になることを常に頭に入れて操作しなければなりません。そのためには充分な練習と慣れが必要となります。
私の場合、その感覚が身につかず、Droneの前面(進行方向)に合わせて身体の方向を変えて操作しています。まるで地図帳を回転させながら進行方向を確認するのと同じように。

◆フライト現場に持って行くと便利な道具
◎予備バッテリー
◎バッテリーの充電器
◎予備のmicroSDカード類(映像録画用)
(SYMA X5Cの場合、1回のフライトで600MB位消費)
◎予備の羽根類
◎精密ドライバー
羽根類の交換や緊急の修理用に◎帽子とサングラス(偏光レンズ)
晴れた日の陽射し除けや逆光で見づらい場合に。
◎タイマー(iPhoneやキッチンタイマーなど)
バッテリー切れを事前に把握するため、飛行時間の約8割の時間でアラームを鳴らすようにしています。
◎釣り用のタモ網
釣り用に持っていた7mのタモ網、これが意外と使えました。木に引っ掛かったドローン本体を落とすことなく救出できて大変役立ちました。

◎ピンセット
軸に糸類が噛んでしまったり、ギアに挟まった物を取り除く際に便利です。
◎ダストブロワー(エアダストスプレー)
土や砂などがギア部分に入り込むと故障の原因になります。これを取除くにはコレが一番便利です。
◎シリコンスプレー
金属やプラスチック類のギアや軸などの潤滑や防錆として最適です。

※SYMA クワッドコプター「X5C」の確実な録画方法
SYMAのX5Cで、動画が撮れなかったというのを見かけます。
プロポ(コントローラー)の左側にある上下スライドを下方向に下げると、カメラ部分の内臓LEDランプが「緑」→「赤の点滅」に変わります。これが動画録画されている状態です。フライト直前に赤に点滅したことを確認してから飛ばせば確実に録画ができます。
飛行途中で上下スライドを上方向に上げると(赤の点滅が1回)で静止画が撮れますが、動画の録画は停止してしまいます。録画した映像から静止キャプチャーを撮るのがお勧めです。
X5C プロポ(コントローラー)

 
最後にドローンは、普段では見ることが出来ない「鳥からの目線(鳥瞰)」で、非常に楽しいと感じると思います。
しかしながら、風に流されることも多く、アンコントロールになる危険性も多々あります。
このことから、飛ばす際は「常に墜落する」という認識を持って、人の居ない場所、交通や施設の妨げにならない場所で行うように心掛けましょう。
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松島 康生
この記事を書いた人
災害リスク評価研究所 代表
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