災害リスクアドバイザー 松島康生 

「竜巻」被害に遭わないための新知識!(2013年9月改訂版)

竜巻の威力!

①車やトラック、物置など、1トンを超えるようなものが吹き飛ばされます。

2012年のつくば市では家屋が竜巻に煽られて、建物ごと持ち上げられて倒壊しました。東京工芸大学の田村幸雄教授によると、建屋の風洞実験において一般家屋が横転する転倒限界風速は109m/s(時速換算400km)もの威力でした。

 

飛散の連鎖で被害を大きくします(飛散した物が衝突して、そこで破壊された物がまた飛散する連鎖)。

 

③上記のような飛散物が強い遠心力によって、突き刺さる現象が最も危険なのです。

飛散物が突き刺さる現象

飛散物が突き刺さる現象

これが原因で窓ガラスを割ったり、飛散物に当たって大怪我をするケースが多いのです。

 

移動スピードが早く、日本では時速90kmの移動速度が記録されています。

2012年5月6日の茨城県の気象

2012年5月6日の茨城県の気象

 

竜巻はいつ、どんなときに発生するのか。

①竜巻はいつ発生するのか

台風シーズンの7~10月が最も多く発生していますが、気象条件がそろえば、一年を通して発生しているので注意が必要です。

また、発生時間をみると大気が一番不安定な時間帯となる14~17時が最も多いのですが、急な寒気の流入があれば、いつ発生してもおかしくありません。

気象庁資料・月別発生数-1991年~2008年

気象庁資料・月別発生数-1991年~2008年

気象庁資料・時刻別発生数-1991年~2008年

気象庁資料・時刻別発生数-1991年~2008年

 

 

②竜巻が発生しやすい気象条件とは

竜巻の主な要因は台風をはじめとする前線や低気圧によるもの、また、急な寒気や暖気の流入によるものが多くなっています。

出典:気象庁・竜巻発生時の気象条件等グラフ-1991~2012年

出典:気象庁・竜巻発生時の気象条件等グラフ-1991~2012年

 

③竜巻はどんな場所で発生しているのか

竜巻分布図のように北海道から九州まで全国で発生しています。特に山間地を除く、沿岸部や平地で発生していることが多く、夏季は内陸部でも発生しています。また、高層ビルなどが建ち並ぶ都心でも発生した事例もあります。

出典:気象庁・竜巻発生分布図-1961~2012年

出典:気象庁・竜巻発生分布図-1961~2012年

 

④竜巻の発生確率

面積換算イメージ

面積換算イメージ

竜巻というとアメリカで多数発生しているようにみられていますが、平地での面積換算するとアメリカも日本も発生数に大差がないのです。

 

一方、気象庁の統計を見ていくと、発生件数が過去に比べて増加している上、風速の規模(Fスケール)も大きくなっているように見受けられます。また、東京大学大気海洋研究所の木本昌秀教授によると、近年の温暖化や都市部のヒートアイランド現象の影響で、今後もさらに増加傾向にあるとされています。

 

竜巻(予報)の情報収集

①ラジオ・テレビなどの気象予報をによる情報入手

②インターネットの気象予報をによる情報入手

③自治体による防災行政無線(スピーカー)による情報

※2011年の気象庁による竜巻注意報の発令件数は589回、うち実際に発生件数は8回でしたが、気象庁からの発令がなく発生している竜巻は、実に31回もありました。

 

2013年9月2日、埼玉県越谷市で発生した竜巻は、積乱雲が発生してからわずか30分足らずの短時間で、巨大積乱雲に成長していたことが気象庁の分析で判明しています。

このようなことから、短時間に発生するため、予測するのが非常に困難なのです。

「自ら気象の前兆現象を観た上で適切な行動をとること」が重要となってきます。

 

◆竜巻の前兆現象(竜巻接近時)

①黒い雲(積乱雲)が発生し、空が急に暗くなったり、風が強くなってくる

②ろうと状の雲や円柱や円筒状の雲の出現

③雷(雷光や雷鳴)や雹(ひょう)の発生

④冷たい風やゴーッという風音

 

竜巻発生の前兆現象

竜巻発生の前兆現象

積乱雲積乱雲

 

竜巻(飛散物)から身を守るには!

内閣府・気象庁資料・竜巻対策(飛散物から身を守る)

内閣府・気象庁資料・竜巻対策(飛散物から身を守る)

※屋内の場合

①雨戸(シャッター)やカーテンを閉め、窓から離れる

②各部屋のドアを閉める(風を通さない)

窓のない部屋か、風が通りづらい部屋、風による落下物が少ない部屋に移動する。

戸建住宅の場合、屋根に被害を受けるケースが多いため、1階へ移動する。

⇒浴槽に避難して危険を免れた事例がありますが、浴室の窓が大きいとガラスが飛散して怪我をすることが予想されます。風が通らない部屋や廊下などを選びましょう。例として、窓のないトイレや風呂、クローゼットや押し入れ、机やベット下などがあげられます。

 

頭から首に掛けて、毛布や座布団などで身体を覆うように保護しましょう。通過するまで数十秒から数分以内です。通り過ぎると急に静かになりますので音で判断できます。

 

※屋外の場合

堅固な建物内(RC造、SRC造)へ避難する(車庫や物置、納屋、プレハブは不可)

②飛散物に当たらないように、狭い窪地凹(水路や溝)に身を伏せる

姿勢を低くして、カバンやバックなどで頭や体を守る

④車両の場合は、近くの堅固な建物内に避難するか、竜巻の進行方向を見定めながら速やかに移動する

 

◆過信せず、すぐに身を守る行動を

竜巻が珍しくて立ち止まって観ていたり、カメラ等で撮影している方がいますが、竜巻は乗用車と同じぐらいのスピードで移動し、急に進路を変えることもあります。まずは安全な場所に避難して身の安全を図ることが第一優先です。

 

TV資料2

また、あるTV番組で、ガラスサッシは風速何mまで耐えられるかなどの実験を行っていました。一般的なガラスサッシは風速80mを超えても耐えていましたが、実際の竜巻は、風速10mを超える風でも飛散物が当たることによって簡単に割れてしまいます。

 

 

ダウンバースト(下降噴流)にも注意

ダウンバースト

ダウンバースト

竜巻のような渦状の風とは異なり、似たような気象の条件下で発生する「ダウンバースト」や「ガストフロント」のよる突風があります。

これは積雲や積乱雲の一部が冷えて、強い下降気流が発生し、急激な風が地表にぶつかるため、局所的に多量の突風が吹く現象があります。これにより屋外のテントや看板などが飛ばされる被害が発生しています。

 

竜巻に対しての事前対策

竜巻は天候の状況により、突然発生することがあります。では、どんな対策をしておいたら良いのでしょうか。

 

①もし、今、竜巻が発生したらどこへ逃げますか? 上記の内容を復習して、家の中ならどこが安全か、学校や職場、外出中だったら、どこが安全なのか頭の中でシミュレーションしておくことを大切です。

 

②竜巻でもっとも危険なのが、飛んでくる飛散物によって物がぶつかったり、怪我をするケースしたり、突き刺さる現象が最も危険です。

このために窓ガラスには飛散防止フィルムを貼りつけましょう。ガラスが割れても最小限で済み、空き巣予防や地震時の飛散防止にも併用の効果があります。

 

③竜巻被害は火災保険が適用されます。

一般的な火災保険には「風災、ひょう災、雪災」の補償があり、竜巻は風災に該当し、台風、暴風、暴風雨等も含まれます。

損壊状況にもよりますが、建物または家財を保険の対象とした場合は、全壊家屋はほぼ100%再建が可能な補償がされます。災害の備えに竜巻被害も入れるのであれば、風災補償が付いているかなど契約内容を確認しましょう。

 

 

詳しくは加入している保険会社の担当者、または災害リスクのホームドックが推奨する地震保険・火災保険のプロ担当者までお尋ねください。

東京海上日動火災保険・代理店「NAGOMI保険プランニング」災害リスク評価研究所・サテライトオフィス

埼玉県さいたま市見沼区大和田町2-1263-2

電話番号:048-682-0160

リスクマネジメント担当:小川

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松島 康生
この記事を書いた人
災害リスク評価研究所 代表
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